活動内容

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平成18年12月 13日

研究部例会 特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入についての研究

研究部例会

特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入についての研究

(平成18年12月13日(水) 場所 神戸市勤労会館 403号室)

研究部部長 和田真一

平成18年5月、新会社法の適用により、最低資本金制度が撤廃され、容易に会社設立が可能となりました。節税目的で容易に法人成りを行うことに対する、節税メリットを抑制するため、特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入の規定が創設されたと言われていますが。しかし、本規定につきましては、平成18年度与党税制改正大綱の決定当初から、関係各方面より疑問の声が上がっておりました。例えば、給与所得控除という所得税の概念を法人税に持ち込んだという点で法体系を歪めているという意見、本規定の創設目的である法人成りによる節税行為を防ぐこと以上に、既存の企業、それも従業員数等の企業規模や業績も十分に伴った一般企業が本規定の対象となるという見通しであり、中小企業に対する活性化を損なわせるものであるという意見、などがあります。その影響も当初の財務省の発表数値よりも対象企業数・増税額とも上回る見込みです。
研究部では、如何にしてこの規定の適用を回避できるか、もしくは受ける影響を少なくする手段について、実務家の視点から研究し、平成18年12月13日に例会として発表いたしました。その後、平成18年12月14日に決定した平成19年度税制改正大綱では、適用除外となる基準所得が現行の800万円から1,600万円へと大幅に引き上げられ、多くの中小企業が適用対象外となりそうな状況です。
本資料は、平成18年12月13日例会での発表時に用いた資料であり、研究対象とする法規定はその当時のものとなっております。また、本規定は平成18年4月1日以後開始する事業年度から適用されておりますが、その時点で国税庁の統計資料等は発表されておらず、実務事績に基づくものではないことをお断り申し上げます。

「例会資料」
特殊支配同族会社の業務主宰役員給与の損金不算入(54ページ : 2.48MB)

 

海外勤務者の社会保険関係について
~中国出向者の事例を中心に~

    1. 問題点
    1. 社会保険については、将来の受給額減少と負担額増加、国民年金未納問題、健康保険赤字、などが騒がれているが、もっと光を当てなければいけない問題は数多ある。 その中の一つが海外出向者の社会保険問題である。現在念頭にある課題は次の通りである。
      1. 海外出向者については、通常は日本親会社が留守宅手当を支給し、海外法人からも給与が支給されている。但し、社会保険料率は、日本親会社支給分のみを基に計算される。従って、海外出向時に、留守宅手当が従前給与のままだとさほど問題は発生しないが、海外法人での給与負担を増額し留守宅手当を削減する場合には、掛金が減少し、将来の年金受給額が減少する。
      2. 海外出向者の日本留守宅手当は、①現地法人等の経営成績を厳密に算定する為に、現地法人等からの支給額が多くなっている、②日本の税務調査において、日本法人の為の勤務実態等がなく留守宅手当が否認されるケースが増加している、事などにより減少傾向にある。
      3. 日本と社会保険協定を締結している5カ国に出向し、そこで当該国の社会保険料を納付している場合は、帰国後もその納付額を通算できる(うち韓国・イギリスの場合は通算不可)。しかし、社会保険協定を締結・発効していない国の企業等に出向した場合、この協定の適用は受けられない。
      4. また中国の様に、そもそも外国人の社会保険加入を認めていない国にあっては、年金問題もさることながら、健康保険をどう手当するかの問題も発生する。
    1. 社会保障協定を締結している場合
    1. 非社会保障協定締結国等への出向・出張の場合の、社会保険と法人税務の処理については、本稿にその詳細を記していますのでご参照下さい。
    1. 出向元法人の対応策
      目下、企業のとっている対応策は、次の通りである。
      1. 年金
  1. 特に対策をとらず、日本の留守宅手当のみを基準として掛金を納付している。
  2. 会社で個人年金をかけて、将来の年金受給額減に備えている。
  3. 現地法人から現地支給後給与を、支給対象者の個人口座を経由して日本親会社が受け取り、留守宅手当と合算して支給し、同時にこれを基準として掛金を納付している。
  4. 出向元法人に対するロイヤリティという名目で支払い送金を行う。
      1. 健康保険
  1. 日本の健康保険に継続加入し、重要な治療は日本で受け、軽微な治療は現地で受けた後、社会保険庁から現地医療費の一部還付を受ける。
  2. 海外旅行傷害保険に加入する。
    1. しかし総じて、多くの中小企業では、この問題について特別な対策をとっていないところが多い。その理由は、下記の通りである。
  1. そもそも出向者がこの問題に気付いていないか、気付いても積極的な対策をとらない。
  2. 会社としては、社会保険料負担を増やしたくない為、積極的な対策をとろうとしない。
  3. 海外支給給与を日本出向元法人を通じて支払う場合の適格性について、社会保険関係法令には明確に規定されていない。
  4. 海外から日本に対して外貨送金規制がある(中国など)。
    1. その他の問題
出向者ではないが、現地で採用された日本人については、全くの自己責任となっており、即ちその個人の任意で国民年金に加入するのみである。しかし、出国に際して日本の住民票を抜いた場合、日本の健康保険に加入できない。尚、日本親会社からの出向及び留守宅手当の支給という形は、偽装雇用・出向となり認められない。
    1. 海外の現地法人では、日本語が話せる人材を確保し、併せて人件費を切り詰める為に、現地採用者を雇うケースが多いが、彼らの社会保険が十分に手当されないケースが多いのではないかと考えている。厚生労働省・社会保険庁において、この現地採用者や、前掲の移籍出向者、また在籍出向者で給与の全額が現地法人負担のケースについて、実態調査を行い、社会保険上の手当が出来る様な制度にして欲しいと願う。 本稿の作成に当たり、神戸の社会保険労務士である小堀景一郎先生に原稿チェックとアドバイスを御担当頂きました。この場を借りて御礼申し上げます。

「例会資料」

海外勤務者の社会保険関係の諸問題について ~中国出向者の事例を中心に~(13ページ : 208KB)